今回は、『君の名は。』について考察をします。内容は、『君の名は。』が2011年3月11日に起きた東日本大震災をモチーフにしているのではないか、という仮説を、5つの理由で主張します。
『君の名は。』要約
『君の名は。』は2016年に公開された新海誠・監督のアニメーション映画です。
東京に住む男子高校生の主人公、滝と岐阜県の山奥に住む女子高生、宮水三葉の、中身が入れ替わり、それぞれの生活を経験します。
入れ替わりのたびに、互いに互いの私生活を少しずつ変えていき、そのことに不満を抱きながらも、徐々に互いについて知っていき、やがて惹かれ合うようになります。
しかし、ある日を境に入れ替わりははたと起きなくなります。
滝は、入れ替わっていた三葉に会おうと思い、記憶の中の景色をたどり、やがて岐阜県の糸守町にたどり着きます。
そこで知らされた事実は、糸守町は三年前に隕石の落下で壊滅していたこと。
そして入れ替わっていた宮水三葉は、そのときに亡くなっていたことでした。
滝は混乱し、何もかも自分の妄想だったのではないかと疑います。
しかし、手首に結ばれたミサンガを見て、三葉の存在を確信します。
ミサンガは、三年前、隕石落下の前日、入れ替わりを繰り返していた三葉が、まだ中学生の滝に会いに来て結んだものでした。
このミサンガを見て滝は、三葉は実在して、自分が入れ替わっていたのは三年前の、亡くなる前の三葉だと気づくのです。
そして最後の望みをかけて、死者と出会えるという、宮水神社の御神体に向かいます。
果たして、御神体の力によって、隕石落下の朝の三葉との入れ替わりに成功します。
滝(肉体は三葉)は、町民に避難指示を出し、最後は再び三葉と入れ替わり、三葉が滝の行動を引き継ぐ形で非難を成功させ、町民も三葉も全員無事で済む。という話です。
東日本大震災がモチーフである5つの理由
以下、章タイトルの主張の理由を一つずつ書いていきます。
理由① 話の概要
「要約」からわかるように、本作で描かれている大まかな内容は、「自然災害で死んだ同い年の女子高校生と町の人を、未来から来た主人公が救う」という流れです。
彗星と隕石、というと馴染みがないが、「隕石の落下とその衝撃による死者」は言い換えれば自然災害とその死者、となります。地震や津波、豪雨や土砂崩れによる死者と同義であると言えるのです。
理由② 5年という、年数の一致
本作が公開されたのは2016年、そして大震災が発生したのが2011年なので、本作公開の5年前に大地震があったことになります。そして、本作の構造は、主人公が2021年に、2016年に自分の身に起きた「入れ代わり」の現象を回顧する、つまり、5年前の出来事を回顧する、という構造なのです。
理由③ 神社の名前
三葉の住まう神社の名前は「宮水神社」といいます。東日本大震災で最大の被害を被ったのは「宮」城県であり、犠牲者の多くは津波という「水」害によって生じました。神社の名前が、大震災を暗示していると言えます。
理由④ 隕石落下直後のシーン
隕石が落下するのが湖の付近であり、衝撃で水しぶきが街を飲み込むシーンの様子が、津波と類似しています。
理由⑤ 祠(ほこら)の位置、滝と三葉が再会する場所の方角
滝は糸守町の付近まで来た後、、町出身のラーメン屋の店主にトラックでご神体のある祠まで送ってもらいます。この位置を主人公がグーグルマップで調べるのだが、その位置は、現在地から見て、「滝が北上していく場所にある」のです。そして滝は北上した祠の近くで三葉と再会します。ここで、津波が東京から見てどの方角で起きたか思い出していただきたいのです。津波は、東京から見て「北」で起きています。つまり、滝の目指した方角であり、糸守町がある方角であり、三葉と再会する方角と、東京から見た津波被害の起きた方角、すなわち「北」が一致しているのです.
まとめ
今回は、『君の名は。』が東日本大震災をモチーフに描かれていることを考察しました。5つの理由に挙げたように、作中にちらちらと示されているのです。