新海誠監督の『天気の子』(2019)は、高評価がある一方で、「気持ち悪い」という評価も散見されます。
そこで今回は、『天気の子』が気持ち悪いと評される理由を考えてみました。
※この記事はネタバレを含みます。
性をイメージさせる描写が多いから
一つ目の理由は、性をイメージさせる描写が多いからだと考えられます。
下記に具体的にどんな点かを挙げてみます。
新宿を走る「バニラ」の宣伝カー
作中で「バニラ」の宣伝カーが走るシーンや、広告の音声が描かれます。
「バニラ」は性関連のサービスを提供するお店に関する高収入求人サイトです。
「バニラ」の宣伝カーは性をイメージさせます。
ガールズバー
ヒロインの陽菜がマクドナルドのアルバイトを辞めさせられた後、勧誘されたのはガールズバーでした。
しかも、マネージャーが警察から反射的に逃げる上に、「未成年だって知らなかったんだよ」というセリフがあり、法律的にグレーなことをしている店のように描かれています。
ラブホテル
警察から追われる帆高と、児童相談所から追われる陽菜・凪らが宿泊したのは新宿のラブホテルでした。
ラブホテルは性に関する要素を強く含みます。
その他にも、姪が露出度の高い服を着ている点、帆高を拾ってくれた須賀の部屋で女性の下着が発見されるシーン、ラブホテルで体が消えていることを見せるために陽菜がはだけるシーン、
そして、これらの描写に対して帆高が顔を赤らめる様子など、性をイメージさせる描写は多くあります。
こうした性をイメージさせる描写が、嫌悪感に繋がるのではないでしょうか。
主人公帆高(ホダカ)の選択が自己中心的すぎるから
二つ目の理由は、主人公帆高の選択が自己中心的だからではないでしょうか。
本作では、主人公帆高が、東京の天気がずっと雨続きになるか、ヒロイン陽菜の命を救うかの二択を迫られます。
そして主人公は、陽菜の命を救うことを選択するのです。
主人公は目の前の大切な一人を選び、代わりに大勢の人が損害を受けることを選択したのです。
もちろん、少数より大勢を救うことを選ぶ方が正しいとは限りません。
しかし、帆高の行動は、「色気づいたガキが、後先考えずに、若気の至りで世界を台無しにした」と、捉えることもできます。
特に、視聴者が帆高への感情移入に失敗していた場合、その視聴者は帆高の行動をそのように評価するかもしれません。
このように、主人公の行動を自己中心的と捉えると嫌悪感に繋がる可能性があります。
目を背けたい社会問題に目を向けさせられるから
三つ目の理由は、目を背けたい社会問題に目を向けさせられるからです。
15歳のヒロイン陽菜は母子家庭から母を失って、弟と二人路頭に迷います。頼れる親戚もいません。
そしてガールズバーに勧誘され、一時はそこで働こうとします。
デフォルメされてはいますが、これは、「経済的に追い込まれた(15歳の)少女が水商売をする」という社会問題にほかなりません。
目を背けたくなるような社会問題に目を向けさせられるために嫌悪感が生じ、「気持ち悪い」と感じるのかもしれません。
まとめ
今回は『天気の子』(2019)が「気持ち悪い」と評される理由について考えました。
個人的には好きな作品ですが、人によっては嫌悪感を抱くことにも共感できます。
『君の名は。』(2016)ほど(amazon primeで)評価が高くない理由には、今回書いた内容も含まれているかもしれませんね。
それでは。