『土竜の唄』パピヨンがかっこいい!理由を考えてみた

土竜の唄

はじめに

こんにちは!

今回は『土竜の唄』のパピヨンこと日浦匡也(ひうらまさや)がかっこいい理由8つにまとめてみました

本記事の目的は、以下の二つです。

  • パピヨンかっこいい!と感じる読者への共感
  • パピヨンのかっこよさの分析を通して、パピヨンや『土竜の唄』への作品理解を深めること

読者の方は、ある程度作品を読まれた方を対象にしております!

では、早速パピヨンがかっこいい理由を見ていきましょう!

とにかくケンカが強い

一つ目は、とにかくケンカが強いことです。

本作では何度もパピヨンと敵との戦いが描かれますが、パピヨンは何度も強敵を倒してきました。

蜂乃巣会・ヒットマンの黒河剣太、
蜂乃巣会・若頭の鰐淵拓馬、
轟周宝・暗殺部隊のヤケル…

ピンチを背負いながらも負けることのないパピヨンの圧倒的な強さは、かっこいいです。

勇敢である

二つ目は勇敢な点です。

パピヨンは無謀とも言えるほど勇敢で、「俺は○ぬのなんて怖くない」というセリフすら出てきます。
また、「逆境こそ俺にとっての快感」と、圧倒的なピンチを肯定する姿勢も見えます。

パピヨン「イラつくな兄弟、俺は楽しくって仕方ねぇんだ」
菊川「た…楽しい??」
パピヨン「大した事ァねえ、失敗すれば○ぬだけだ。成功したら数奇矢会の頂点が目前になる。こんな50段飛びみてぇにのし上がれるチャンスは滅多にねぇ。ありがとうよ、兄弟。」

出典:『土竜の唄』(高橋のぼる、小学館) 334話、「○」部分のみ筆者改訂

これは轟周宝の愛娘である轟迦蓮が、連れ去られたとき、パピヨンと菊川がオークション会場から救出する作戦でのセリフです。

「○ぬ可能性」というネガティブな要素を恐れず、「圧倒的出世」というポジティブな部分に目を向けている点、勇敢な点が最高にかっこいいですね。

※筆者の都合上文章中の文字を一部「○」にて伏せ字をしております。

常に人の可能性に目を向けている

パピヨンは常に可能性に目を向けています。

象徴的なのは、彼のセリフに度々登場する「青虫」「輪廻転生」というキーワードです。

パピヨンは若い「青虫」に対して「見たこともない美しい蝶」になることを常に期待しています。

それはつまり、どんな人にも可能性を見いだしているということです。

また、罪を犯した轟周宝に対しては、以下のように輪廻転生を語っています。

魂は今生の舞台で全力で踊り切ってッ、
次の新しいステージでキレキレダンスだ!!
改心して残りの人生ッ、ビッカビカに輝けよ、轟周宝!!!
出典:『土竜の唄』(高橋のぼる、小学館) 722話

パピヨンはヤクザなのに、もはや潜入捜査官・菊川よりも警察官らしいセリフで驚きですね…

パピヨンは、今世で報われずとも、今を全力で生きることで次のステージ=来世で報われると語っているのです。

今世でどれだけ罪を犯しても、今から全力で改心して生きることで、その頑張りは来世で報われると、来世という可能性を示しています

若者から罪深き老人にまで、広い範囲で可能性を見いだしている、人間の可能性を信じる男なのです。

かっこいいですね。

正しさより面白さを追求する姿勢

ヤクザってのは、面白くなくちゃいけねぇ。
何が正しいか正しくないかじゃねぇ。
何が面白いか!だ!!
シャブを凌ぎにしなくちゃいけねぇヤクザは面白くねぇ。
(中略)
逆境こそ、俺にとっての快感!!
出典:『土竜の唄』(高橋のぼる、小学館) 584話

「ヤクザは面白くなくてはいけない」とパピヨンは繰り返し語っています。

真面目な人ほど日々の生活を送る中でどうしても「正しさ」に目がいきがちです。

しかし「正しさ」だけを軸に生きていたら、きっと人は閉塞感に悩み、疲弊してしまうでしょう。

パピヨンの面白さを追求する姿勢は、そういう閉塞感を打ち砕く視点を読者に与えます。

さらに、パピヨンの言う「面白さ」というのは、決して「正しさ」と完璧に矛盾するものではない点も、かっこよさだと感じます。

「正しさ」を否定するくらいだから、人の幸せなんて考えず好き放題やるのでは?と思うところです。

しかし、上のセリフにあるように、パピヨンはヤクザが利益を生み出しやすいシャブを否定するのです。

このセリフの背景にはパピヨン自身がシャブで大切な人を失った過去があるのですが、パピヨンの語る「面白さ」というのは、「自分勝手に好き放題」ではないことが読み取れます。

パピヨンはもっと、自分磨きとか自己実現とか、周囲の人をハッピーにする方向での「面白さ」を追求しているように見えます。

そういう粋な「面白さ」を追求する姿勢がかっこいいですね。

また、鶴條(つるじょう)に対して語る「制約があるからこそ面白い」にも通じますが、逆境に立ち向かうことを「快感」とポジティブに捉える点もいいですね。
人と比べてどうではなくて、自分に課せられた制約の中でどこまでやれるかを試す。
そしてそれを楽しむ姿勢が見えます。

みんなスタートラインが違うのだから、「自分が置かれた環境からどれだけ改善できたか?」に価値を見出すことで、やる気が湧いてきたり、やりがいが出てくるかもしれません。

漢(おとこ)を磨く姿勢

パピヨンの「漢(おとこ)を磨く姿勢」もかっこいいですよね。

例えば、轟周宝の息子・轟烈雄(とどろき れお)との戦いのシーン。
パピヨンは、烈雄が父親に怯えて父親にとって理想の息子を演じていると指摘します。

烈雄「てめえが言う本物ってなんだ!?」
パピヨン「蝶だ!!かけがえのない蝶になるのだ!!」
(中略)
パピヨン「自由なルートを得意な飛行で好きなだけ飛ぶのだ!!」
(中略)
パピヨン「おしい!!貴様の羽はどでかく面白い!!本気で大空を楽しめ!!
魂磨いて翔(はばた)いてみやがれ!!本物の”男”になって、も一度会いに来いッ!!」
出典:『土竜の唄』(高橋のぼる、小学館) 593話

「漢を磨く姿勢」がいいところは、「他人と比べていない点」にあるのではないでしょうか。

あくまでも、比較の対象は昨日の自分自身なのです。

他人と比べてどうかではなくて、自分自身が昨日よりも「漢」になっているか

人はとかく他人と比べてしまいがちで、比べては「自分が劣っている」「なんか頑張るの馬鹿らしいな」と落ち込んだり、やる気を失います。

しかし、他人と比べても、環境や経験、素質などが違うため、あまり今はありません。

距離と重さを比べようとしているようなものです。
比べられないもの同士を比べようとしているのです。

でも、昨日の自分は、環境も経験も素質も同じ相手です。

だからこそ、比較の意味があって、また勝てる可能性があるのです。 

自分自身との比較であれば、確実に日々の成長が成果になっていきます。
そうして成果が見えるからこそ、気持ちは前向きになるし、やる気も出てきます。

他人ではなく、昨日の自分と戦う。

「漢を磨く姿勢」には、そういう他人に振り回されない自分軸での生き様が表れていてかっこいいです。

今を全力で面白く生きている

今を全力で生きる姿勢もとてもかっこいいですね。

例えば、轟周宝が失った婚約者・日向子(ひなこ)と再び会いたいと慟哭するシーンでは、以下のセリフが出てきます。

人生はダンスだッ!
楽しく面白く踊って次のステージさ!!
(中略)
踊りまくるんだッ!!
(中略)
今、生きている間に最高に面白いステップ踏んでッ、悔いのないダンスを踊り切るんだ!!
出典:『土竜の唄』(高橋のぼる、小学館) 722話

また、心肺停止して幽体離脱をした際には「太く短い生涯だったなぁ」と人生を振り返っています。

他にも「俺はいつ〇んでも構わねぇんだ」というセリフも出てきます。

パピヨンは、今を最高に面白く生きようとする人間です。

人はとかく今を見失い、過去や未来に囚われがちです。

「あのとき、ああすればよかった」

なんであんなこと言っちゃったんだろう」など過去を思い後悔します。
また、「この先が見えない」「もうずっとダメな気がする」など、未来に対して不安を感じたり絶望したりします。

しかし、今この瞬間に集中し、今を全力で面白く生きようとすることで、過去や未来のことは頭から消え失せます

後悔も不安を消え去るのです。

もちろん、未来のための行動は大切なのですが、未来への不安や過去への後悔に押しつぶされそうなときは、パピヨンの生き方を思い出すといいかもしれません。

そんな風に、過去や未来に囚われてネガティブにならず、今に全集中して面白く生きようとする姿がかっこいいなぁと感じます。

真理を突き、相手の心を解放する

真理を突き、相手の心を解放するのもかっこいいと感じました。

例えばヘヴンリー・アマゾネス号での轟四人衆の二人との戦いの際には、以下の真理を語りました。

天国も地獄も…同んなじ場所なンだぜ。
(中略)
優しさと思いやりがあれば、助け合い協力し合って、いくらでも飲める!!
(中略)
強欲な人間とッ感謝して生きる人間!
その違いが天国にも地獄にもなるということだ!!
(中略)
そろそろ気づいてもいいんじゃねーか。
出典:『土竜の唄』(高橋のぼる、小学館) 630話

このセリフと共に二人に情けをかけ、改心させました。

また、ヘヴンリー・アマゾネス号で轟周宝の部下・鶴城に対してはヤクザになった原点を思い出させ、「制約があるからこそ面白い」という真理を語り、シャブを捨てさせて味方につけました。

他にも、世間からの批判に負けてドーピングに手を染めた女柔道家・葉隠紫苑や、ドン・ラッザの子分であるジューシー(450話)など、パピヨンは幾多の場面で相手に真理を説き、心を解放してきました。

単に喧嘩が強いだけではなく、真理を悟っているという精神的な強さも兼ね備えているパピヨン。
かっこいいですね。

我慢強い

男は忍の一字だ!」と阿湖 正義(あこ まさよし)も言っていましたが、パピヨンはとにかく我慢強いです。

もはや『土竜の唄』の名物になっている気がしますが、「麻酔なしでのオペ」をパピヨンは何度もしています。

麻酔なしで(!)、出血が多ければ傷口を焼いてふさぐ「焼灼止血法」(しょうしゃくしけつほう)をしたり、横隔膜を素手でひっくり返すなどなど…

気絶するほど痛い手術を何度も行ってきました

また、我慢強いというのは単に痛みに強いというのもありますが、広く捉えると様々な誘惑やストレスに負けないとも捉えられます。

例えば、色欲に負けない、金欲に負けない、人間関係でストレスに負けない、怒りの感情に負けない、絶望に負けない、悲しみに負けない、、、

我慢強くあるというのは、多くの人間にとっての課題であって、理想であると感じます。

我慢強さ、精神力の強さを持ったパピヨンはかっこいいなぁと感じます。

まとめ

今回はパピヨンのかっこいいところを8つ紹介しました。

他にもこんなところが!というかっこよさがあれば、ぜひコメントください。

それでは、また次回。

この記事を書いた人

都内私立大学を卒業→大学院進学→メーカーに就職←イマココ、のアラサーブロガー。高校3年生の現代文の授業で、『舞姫』(森鴎外)の解説を受けてから文学にハマり、以降文学書を読み漁る。好きな作家は村上春樹、夏目漱石、太宰治。
いろんな作品の考察や感想を書いていきます。たまに書評も。

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