こんにちは。
今回は「社会学入門」(見田宗介,岩波書店,2006)を読んでみた感想をご紹介します!
本記事の目的
本記事の目的は、社会学入門を1人でも多くの方に手に取っていただくことです。
また、私が感じた感動が、読者の方に少しでも伝わればと思います。
そのために本書の魅力をお伝えします!
著者紹介
著者は見田宗介(みた むねすけ)氏(1937-2022)です。
東京大学出身で、社会学の教授を勤めていらっしゃいました。
「自分も人類もどうせ滅びるのに、全てになんの意味があるんだろう?」
「人はどうしたら幸せに生きられるのだろう?」
そんな「ニヒリズムと死」「愛とエゴイズム」の問題を50年以上、人生をかけて問い続けた方です。
魅力1 人の幸せに必要なものが書いてある!
一つ目の魅力は、人の幸せに必要なものが書いてある点です。
以下に本文より抜き出した、幸せな要素を書き出しました。
- アート、文学、思想、科学の自由な創造
- 友情
- 愛
- 子どもたちとの交歓
- 自然との交感
著者紹介で書いた通り、本書の著者・見田氏は50年間、人の幸せについて学問的に考え続けた人です。
そんな人が導き出した「人の幸せ」には、信頼性がありますね。
私としては、本書を読む前から、良好な人間関係は幸せに必要だろうなと思っていました。
そのため、友情や愛が幸せな要素であることは分かっていたと言えると思います。
一方で、アートや文学や思想や科学、自然との交換、こちらを幸せとして明記してあることに、新しさを感じました。
私は本書の読後にふと、昔はポケモンの絵を写して描くのが好きだったことを思い出しまして。
「結構自分って絵を描くのが好きだったかも?」と思い、最近また簡単な絵を描いてみています。
結構楽しいです笑
本書にある通り「アート」は幸せの要素なのかもしれません。
魅力2 日常の中の大きな喜びと、その追求
本節では、子育て中の身として、惹かれた部分について書いてみました。
経済競争の脅迫から解放された人類は、…子どもたちとの交歓…の限りなく豊饒な感動とを、追求し、展開し、享受しつづけるだろう。
出典:『社会学入門』(見田 宗介,2006,岩波書店) p164、(…部は中略)
この「限りなく」と、「追求」というのがいいですね。
「限りなく」というと、なんだかありふれた家族との会話や子供との関わりの中に、とてつもなく大きな幸せを見つけることが出来る気がしてきます。
「追求」には、子ども含め、周りの人たちとどうしたらより感動しあえるかということを、考えて行動していくというニュアンスが含まれていますね。
逆に言うと、単に受動的に待っていれば手に入るものではない、というニュアンスも含まれるように思います。
追求することで手に入り、また追求することそのものが幸せになるということなのでしょう。
そして次に書きますが、追求すること同時に、現状を肯定することの大切さも、本書は書いています。
魅力3 今の肯定、子育ての肯定
子育てにはどうしても時間と手間がかかります。
自己啓発や残業してスキルアップする時間が取りにくいです。
そんなとき、周囲の結婚や子供がいない人たちと比べて、焦ったりするのです。
彼らは時間も体力もたっぷりあって、どんどんスキルアップしているのに、自分はあまり出来ていない…。
そんな風に焦っていました。
しかし、本書を読み、今を肯定すること、そして子どもとの時間を肯定することに対して、後押しをしてもらった気がします。
例えば、上の引用部分とも一部被りますが、以下の部分。
経済競争の脅迫から解放された人類は、アートと文学と思想と科学の限りなく自由な創造と、友情と愛と子どもたちとの交歓と自然との交感の限りなく豊饒な感動とを、追求し、展開し、享受しつづけるだろう。
‥
「天国」や「極楽」は、未来のための現在ではなく、永続する現在の享受であった。
‥
けれどもそれは、‥存在するものの輝きと存在することの至福を享受する力の解放という‥課題の克服をわれわれに要求している。
出典:『社会学入門』(見田 宗介,2006,岩波書店) p164、(…部は中略)
これらのフレーズに、子どもとの今を全力で楽しむことを肯定してもらった気がします。
ああ、そう思っていいんだなと、背中を押してもらった感覚です。
また、現状を肯定することの大切さも読み取れますね。
とかく人は目標達成のために頑張りがちですが、天国は目標ではなく、今であるということ。
今存在しているもの、存在していること、その幸せを噛み締めることこそが大切であると、思い出させてくれます。
魅力4 今を俯瞰して見ることで、新しい視点を得られる!
本書の4つ目の魅力は、今を俯瞰して見ることで新しい視点を得られることです。
唐突ですが、異化作用という言葉をご存知でしょうか?
異化作用とは、自分が普段当たり前だと思っている物事を、客観的に眺めて新しい捉え方をすることです。
本書では、「日本人の忙しさ」が異化されます。
具体的には、見田氏がインドに旅行した際の経験が書かれています。
インドの鉄道は、時間の不正確さが半端じゃないようです笑
1時間や2時間の遅れはざらで、ときには半日待った挙句、運行取り止めになったりするようです。
2分3分の遅れでプラットホームにアナウンスが流れる、駅員や車掌が謝る日本とは大違いです。
ただ、日本にいるとそんな分刻み、いや秒刻みのスケジュールが当たり前になってしまいます。
たとえそれが異常なことであっても、中々気づくことが出来ないのです。
かつて、15世紀ごろにヨーロッパで都市の中央に時計塔が建った際には、短針しかなかったなんて話も出てきます。
こんなふうに、他の環境と比較することで、自分の置かれた状況を違った観点で捉えることが出来ると教えてくれます。
異化作用のメリットは例えば、今何かが苦しい、つらいというときに、それは自分自身に問題があるとは限らないと知れることです。
環境が狂っている可能性に目を向けられるのです。
異化作用の視点を持つことで、追い詰められても救われる可能性が上がるんじゃないかなと思います。
魅力5 夢中になることが幸せであると教えてくれる
好きなことをしているのに、なんだか罪悪感に駆られることってありませんか?
こんなことしてていいのかな、もっとやるべきことがある気がする‥など。
私の場合もありまして、読書したり絵を描いたりしていると楽しいのですが、ふと
「こんなことしてる場合じゃない」
「もっとこう、スキルアップ的なことしないと」
と、漠然とした焦りを感じたりすることがあります。
もちろん、本当にやるべきことがあるのに先延ばしにしているケースもあるでしょう。
何かしらの現実逃避のケースもあるでしょう。
そういう場合は、本当に向き合うべきものと向き合う姿勢が大切な面もあります。
一方で、純粋に好きなことをしたいのに、別の屈折した欲求。
例えば他人に好かれたいとか、見栄を張りたいとか。
そういうものが焦りとなったり不安となったりして、純粋に好きなことをする邪魔をしてくるケースも存在します。
このようなケースは問題だと思うのです。
純粋に好きなことを好きなだけやる喜びというものが、この世にはあります。
自分にとって切実な問題を追うとか、大好きなことをやるとか。
この本の筆者は自分にとって大切なものを追いかけることを肯定してくれます。
以下の引用などです。
「どういう生き方をしたらいいのか」「ほんとうに楽しく、充実した生をおくるには、どうしたらいいか」という問題を解決するのに、五〇年もかけてしまったら何にもならないではないか、と、思う人は多いと思います。
けれども、ほんとうに自分にとって大切な問題を、まっすぐに追求しつづけるということは、それ自体が、どこまでもわくわくとする、充実した年月なのです。
一人の人間にとって大切な問題は、必ず他の多くの人間に取って、大切な問題とつながっています。
出典:『社会学入門』(見田 宗介,2006,岩波書店) p13
成長にこそ価値がある、目標の達成にこそ価値がある。
私自身そういう価値観に染まっている部分があります。
ただそうではなくて、今にこそ価値がある。
夢中で追いかける過程にこそ、人生の意味が詰まっている。
そんなふうに夢中になる今の幸せを噛み締めなさいと肯定してくれるのも、本書の魅力です。
まとめ
今回は、見田宗介氏の『社会学入門』を紹介しました。
今を肯定できないと感じる人、人生に対して何だかモヤモヤする方、そうでない方も、ぜひ手に取ってみてください!
きっと「うんうん、分かる分かる」と共感できる部分があり、背中を押してくれる部分があります。
それでは、また次回。