『天気の子』の食 ~食事による状況・キャラの表現~

天気の子の食事シーン

天気の子で食事のシーンは、調理のシーンやカフェのシーンも含めると15回以上ありますが、今回はそのうち8回分をピックアップして、時系列で表にしてみました。

No登場人物食事の内容場所
1帆高、須賀チキン南蛮定食+ビール東京行きフェリー
2帆高カップヌードル漫画喫茶
3帆高、陽菜ビッグマックマクドナルド
4帆高、須賀、女家庭料理須賀の事務所
5帆高、陽菜家庭料理+帆高持参のスナック陽菜の家
6帆高、陽菜、凪、滝らスイカ滝の祖母の家
7刑事二人立ち食いそば立ち食いそば屋
8帆高、陽菜、凪カップヌードル+ホットスナックラブホテル

このように本作では、ほとんどの主要キャラについて、食事をするシーンが出てきます。
これらのシーンは、どれも登場人物の年齢や特徴、状況をよく表しており、
舞台装置としてよく機能していると言えます。

一シーンずつ、どのように登場人物の置かれた状況やキャラクター性が表現されているか見ていきましょう。

少年に食事とビールをおごらせる大人、須賀(スガ)

本作の最初の食事シーンは、のちに帆高(ホダカ)を雇う須賀(スガ)が、フェリーの食堂で帆高(ホダカ)に定食とビールをおごらせるシーンです。
直前にフェリーの甲板から海に滑り落ちそうになった帆高(ホダカ)を助けており、そのお礼に帆高(ホダカ)おごらせています。

未成年に対し、当然のように対価を求める須賀(スガ)は、図々しい性格だと言えます。
同時に、「助けて終わり」ではなく、初対面の人間に対しても積極的に関りを持とうとする、気さくな性格ともいえるでしょう。

また、「助けた」ことに対して対価を要求する点は、ビジネスライクで、ある意味で大人な性格とも言えます。
このビジネスライクな性格は、「もう大人になれよ、少年」という言葉と共に、須賀が親権争い中で警察に追われる帆高(ホダカ)を追い出す行動にも表れています。
その際、報酬・手切れ金として7万円を帆高(ホダカ)に手渡しているのも、対価をきっちり支払うという点でビジネスライクだと言えます。

このように、須賀(スガ)にビールと定食をおごるシーンでは、須賀の「図々しさ」「気さくさ」「ビジネスライクさ」を表現しています。

家出少年とカップラーメン

帆高(ホダカ)が東京に出てきて最初に泊まるのは漫画喫茶です。
漫画喫茶で求人を探しながら、カップラーメンをすすります。
調理器具もキッチンもなく、お金もない帆高(ホダカ)の追い込まれた状況をよく表現しています。

ビッグマックでつながる帆高(ホダカ)と陽菜(ヒナ)

陽菜(ヒナ)が帆高(ホダカ)にビッグマックをおごるシーンです。
「新宿で一人で夕飯にマックを食べる」というのも、いかにも家出少年ですね。

また、陽菜(ヒナ)が「君、三日連続夕飯それでしょ」というセリフと共に、そっと帆高(ホダカ)にビッグマックを渡すシーンは、見ず知らずの少年にご飯をおごってあげるという、陽菜(ヒナ)の親切さが表現されます。

(ここで、陽菜(ヒナ)は帆高(ホダカ)との関係を開始したのですが、実は裏があったのでは、という考察をしています。よかったら読んでみてください↓)
『天気の子』の陽菜(ヒナ)がかわいい?あざとさの理由を考察 | シネマ考察 (hikari-fortune.info)

須賀(スガ)の事務所で、須賀(スガ)・帆高(帆高)・夏美(ナツミ)の三人で食べた食事

帆高(ホダカ)の歓迎会と称された、三人での食事です。
「東京に来て、誰かと食べた初めての食事だった」というセリフにもある通り、本作で最初に帆高(ホダカ)が誰かと食事をするシーンです。
家出少年としてどこにも属さず孤立していた少年が、所属する居場所を得たことを表現しています。
同時に、経済的な問題も解消され、居・食・住が手に入ったことも表現しています。

帆高(ホダカ)が陽菜(ヒナ)の手料理を食べるシーン

帆高(ホダカ)が陽菜(ヒナ)の家に初めて招かれて、陽菜(ヒナ)の手料理を食べるシーンです。
このシーンで陽菜(ヒナ)のおいしそうな手料理が振る舞われ、病気のお母さんの代わりに家事・炊事をこなしていたのかな、と推測させます。
また、帆高(ホダカ)が持参したスナック菓子を料理に取り入れる点は、「茶目っ気」や「子供っぽさ」が強調されます。
陽菜(ヒナ)はまるで大人のように家事をこなしますが、まだ子供の部分を残していることを象徴しています。

さらに、よく見ると、食後にコンビニのイチゴケーキのようなものを陽菜(ヒナ)がスプーンですくっているシーンも描かれています。
スイーツ好きな女の子らしさが細かく描写されているのです。

瀧(タキ)の実家でスイカをごちそうになる帆高(ホダカ)たち

天気を晴れにする仕事の一環で、帆高(ホダカ)・陽菜(ヒナ)・凪(ナギ)は瀧(タキ)のおばあちゃんの家に行きます。
そこで振る舞われるのがスイカです。
夏におばあちゃんの家でスイカが振る舞われるというのは、いかにもですね。

立ち食いそばをすする刑事二人

家出した上に銃器の不法所持が疑われる帆高(ホダカ)を追う刑事二人が、立ち食いそばをすするシーンです。
オシャレなレストランや喫茶店ではなく、立ち食い蕎麦屋というのが、いかにも刑事らしいですね。

ラブホテルでホットスナックとカップラーメンをすする帆高(ホダカ)たち

刑事と児童相談所に追われる三人が、避難場所として選んだラブホテルで夕飯を食べるシーンです。
インスタントの食事が並び、追い詰められていることや、不健全であること、非常事態であることなどが、表現されています。

また、カップラーメンは、冒頭で帆高(ホダカ)が漫画喫茶で食べたものと同じです。
冒頭と比べて、カップラーメン以外にも食品が沢山並んでいる点が、陽菜(ヒナ)や凪(ナギ)の仲間を得たことを表現しています。

まとめ

今回は『天気の子』の食事シーンをまとめました。
登場人物の置かれた状況やキャラクター性にマッチした食事シーンが描かれていることが確認できました。
また、まとめてみると意外と食事シーンの回数は多いです。
人の生活を描いているので当たり前といえば当たり前ですが。
新海誠監督の他の作品との比較も、いずれしたいです。
それでは。

この記事を書いた人

都内私立大学を卒業→大学院進学→メーカーに就職←イマココ、のアラサーブロガー。高校3年生の現代文の授業で、『舞姫』(森鴎外)の解説を受けてから文学にハマり、以降文学書を読み漁る。好きな作家は村上春樹、夏目漱石、太宰治。
いろんな作品の考察や感想を書いていきます。たまに書評も。

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