今回は、『天気の子』の暴力シーンを考察します。
結論は、『天気の子』は他の新海誠作品と比べて、圧倒的に暴力シーンが多い、です。
新海誠監督作品の暴力シーン
暴力シーンの定義を、今回は「他人を物理的に傷つけようとする行為」と定義します。
『ほしのこえ』(2002)のロボットvs宇宙生物の戦闘シーンや、『君の名は。』(2016)の発電所の爆破シーンなどは除外されます。
また、『すずめの戸締り』(2022)の叔母からの暴言も除きます。
その上で各作品の暴力シーンの回数をまとめてみました。
作品名 | 暴力シーンの回数 |
ほしのこえ(2002) | 0回 |
秒速五センチメートル(2007) | 0回 |
言の葉の庭(2013) | 1回 |
君の名は。(2016) | 3回 |
天気の子(2019) | 12回 |
すずめの戸締り(2022) | 0回 |
こうして見ると、『天気の子』の暴力シーンは他作品と比べて圧倒的に多いということが分かります。
各作品の暴力シーンの内容
続いて、各作品での暴力シーンの内容を見ていきます。
言の葉の庭
暴力シーンは一回のみです。
『言の葉の庭』(2013)では、主人公の孝雄(タカオ)が、女教師雪野(ユキノ)をいじめた不良グループに殴りかかります。
君の名は。
『君の名は。』(2016)では3回暴力シーンが出てきます。
一回目は、主人公瀧(タキ)のバイト先で、瀧(タキ)(中身は三葉のとき)が客から「楊枝が料理に刺さっていた」と言いがかりをつけられるシーンです。
このとき瀧(タキ)の先輩の女性小野寺(オノデラ)が瀧(タキ)の代わりに謝ってくれますが、客はカッターを取り出し、小野寺(オノデラ)のスカートに切れ目を入れます。
二回目は、三葉(ミツハ)(中身は瀧)が不良たちを威嚇するシーンです。美術の授業中に机をけり倒します。
三回目は、三葉(ミツハ)(中身は瀧)が隕石の落下を前に町民を避難させるため、父親を説得するシーンです。
このとき、父親の説得に失敗して病気扱いされた三葉(ミツハ)(中身は瀧)が、怒りに任せて父親の胸ぐらをつかみます。
天気の子
『天気の子』(2019)では暴力シーンがなんと12回も出てきます。
数が多いので、表の形式で時系列に書き出してみます。
No | シーン |
1 | ガールズバーのマネージャーが帆高(ホダカ)に足を引っかけて転倒させる |
2 | ガールズバーのマネージャーが帆高(ホダカ)に馬乗りになり顔を叩く |
3 | 帆高(ホダカ)がガールズバーのマネージャーに向けて発砲する |
4 | 警官が帆高(ホダカ)に馬乗りになる |
5 | 陽菜(ヒナ)が警官にタックルする |
6 | 須賀(スガ)が帆高(ホダカ)に平手打ちをする |
7 | 帆高(ホタカ)が須賀(スガ)の腕に噛みつく |
8 | 須賀(スガ)が帆高(ホダカ)を蹴り飛ばす |
9 | 帆高(ホダカ)が須賀(スガ)を前に発砲する |
10 | 刑事が帆高(ホダカ)を押さえつけて顔を地面にこすりつけ、手錠をかける |
11 | 須賀(スガ)が刑事にタックルする |
12 | 凪(ナギ)が警官にタックルする |
また、帆高(ホダカ)は冒頭の船のシーンで顔中に絆創膏を貼っています。
周囲の人間(例えば厳格な父親)からの暴力が読み取れます。
仮に帆高(ホダカ)が仮に父親から暴力を振るわれたとしたら、反発心が湧いていたはずです。
帆高(ホダカ)が刑事に拳銃を向けて反抗したのは、刑事という強烈な父性の象徴に対し、父親の影を見たせいかもしれません。
さらに、作品の冒頭部分は作品全体の印象を決定する重要な場面でもあります。
新海誠監督は作品冒頭、主人公を絆創膏だらけで登場させることで、作品に描かれる暴力を印象付けたかったのかもしれません。
まとめ
今回は『天気の子』(2019)は、新海誠監督の他の作品と比べて、圧倒的に暴力シーンが多いことが分かりました。
『天気の子』は新海誠監督が、「暴力」を多く描いた作品である、と言えるかもしれません。
他の作品と比較することで、その作品の特徴的な部分が見えてくるのは面白いですね。
それでは
※別記事で、性が強調されている点を考察しています。
今回の記事と合わせて、『天気の子』(2019)は暴力と性を描いた作品といえるかもしれません。
↓『天気の子』(2019)の性について書いた考察はこちらになります。
天気の子が気持ち悪いと言われる理由を考察 | シネマ考察 (hikari-fortune.info)