『天気の子』凪の名前の由来を考えてみた

今回は『天気の子』(2019)で、ヒロイン天野陽菜(アマノヒナ)の弟である凪(ナギ)の、名前の由来について考えました。

結論から書くと、凪の名前の由来は、陽菜と帆高が接近しすぎるのを防ぐ、から来ているのではないかと思われます。
※今回は「由来」といっても、「両親がどういう意味を持たせて名付けたか」ではなく「作者の新海誠がどういう意味を持たせて名付けたか」を考えます。

「凪」という漢字の意味

「凪」をインターネットで検索すると、下のように出てきます。

風がやんで、波がなくなり、海面が静まること

出典:https://www.weblio.jp/content/%E5%87%AA

凪、は風がない静かな状態を指す言葉です。

「帆」と「凪」の関係

次に「凪」と主人公、帆高(ホダカ)の「帆」という漢字の関係について考えます。

「帆」は船についていて、船は帆に風を受けることで、風の力で前に進むことができます。
また、「船」は、作中では帆高(ホダカ)の登場シーンでも出てきていて、帆高(ホタカ)の出発を象徴する重要なアイテムです。

一方で、「凪」のときは風がないので船が前に進むことができません。

このような「凪」と「帆」の関係を見ると、凪のときに帆を挙げても前に進めないことから「凪」は「帆」に対して抑えるような、抑止力の働きがあると言えます。

ホテルのシーン 「帆=船」を止める「凪」

「凪」が「帆」に対して押さえつける関係にあるとしたときに、作中でそのような凪(ナギ)と帆高(ホダカ)の関係を探すと、ホテルのシーンが思い浮かびます。

児童相談所から逃れた陽菜、帆高、凪の三人は、雨雪の中歩き回り、警官から逃げ、最後にホテルにたどり着きました。

このホテルは、明らかに男女が関係を持つようなホテルとして描かれています。
ホテルで三人は一夜を明かすのですが、もし凪がおらず、帆高と陽菜が二人きりになっていたら…
万が一のことがあった可能性は否めないのでしょうか。

こう考えると、凪(ナギ)の名前の由来は、「名前に「帆」を持つ帆高(ホダカ)が、陽菜(ヒナ)と一線を越えることを押さえつける」役割から、新海誠が名付けたのではないでしょうか。

帆高と凪の恋愛への慣れの違い

「帆」と「凪」を相対する性質として捉えるなら、帆高(ホダカ)と凪(ナギ)の相対する部分も、名前の由来になるかもしれません。

2人の違いはいくつかありますが、「恋愛への慣れ」は一つ大きな違いといえそうです。

凪(ナギ)には彼女も元カノもいることが作中で描かれています。
一方で帆高(ホタカ)は、女性に対して不慣れであり、赤面する様子が多く描かれます。
例えば、穂高(ホダカ)が東京に来た時、バス内で同級生の少女と仲良く話す凪(ナギ)を見て赤面したり、街中でメイド服を着た女性に勧誘を受けて赤面したりしています。

また、帆高(ホダカ)は陽菜(ヒナ)の誕生日プレゼントについても凪(ナギ)にアドバイスを求めます。
その際、凪(ナギ)に対し「先輩って呼んでいいですか」とコメントします。

このように、恋愛慣れした凪(ナギ)と、恋愛には不慣れな帆高(ホダカ)は対照的に描かれます。
「帆」と「凪」の相対する性質が、穂高と凪の「恋愛への慣れ」の点での対照的な性質に当てはめられているのかもしれません。

まとめ

今回は、『天気の子』の凪の名前の由来について考えてみました。
作者が込めた意味を考えると、登場人物の対比が見えてきて面白いですね。 それではまた次回。

この記事を書いた人

都内私立大学を卒業→大学院進学→メーカーに就職←イマココ、のアラサーブロガー。高校3年生の現代文の授業で、『舞姫』(森鴎外)の解説を受けてから文学にハマり、以降文学書を読み漁る。好きな作家は村上春樹、夏目漱石、太宰治。
いろんな作品の考察や感想を書いていきます。たまに書評も。

hikariをフォローする
天気の子新海誠
シェアする
きまぐれ文学