今回は、『わにわにのごちそう』(小風さち・文、山口マオ・絵、福音館書店、2007年)の感想を書いていきます!
3つのポイントが面白いな、いいなと思ったのでご紹介します。
急に野生的に!ワイルドに肉を貪るわにわに
一番印象に残っているのは、わにわにが鶏肉の丸焼きを食べるシーンです。
「がふっ がふっ がふっ」
「むちゃっ むちゃっ むちゃっ」
食べる様子がこんな効果音で表現されていて、わにわにが夢中で食べている様子が伝わります。
また、このシーンの直前までは、わにわには比較的人間らしい行動をするのですよね。
例えば、冷蔵庫を開けて鶏肉を取り出したり、青いエプロンをつけて鶏肉を焼いたり‥
それがこのシーンで、フォークとナイフを放り出して、鳥の脚につけた持ち手も捨てて、鶏肉の塊を丸ごと口の中に放り込んでいるのです。
とってもワイルドなのです。
「人間的でお上品」から「動物的でワイルド」へと一気に動くシーンで、強く印象に残ります。
「花より団子」ではないですが、形式やらマナーやら大事だけどやっぱり人生の本質はこれじゃないか!?
というような、抑圧された状態から解き放たれるような、開放感を味わえるのです。
自分で料理するからこその満足感
今回の話は「わにわにのごちそう」というタイトル通り、わにわにが美味しい料理を食べる話です。
この美味しい料理が、出来合いのものや他人が作ったものではなく、自分で焼いているところがいいなと思いました。
肉を焼くシーンはがっつり描写されていて、
「じゅう じゅう じゅう」という、肉の焼ける美味しそうな音で表現されています。
そしてわにわには、肉を焼きながら涎を垂らしています。
自分で焼くからこそ、目の前で肉が焼けていく過程で「ああ、美味しそうだな」「早く食べたいな」と期待が膨らんでいきます。
この「期待」は、目の前で肉を焼くからこそ膨らむものであって、食事の満足度が高まりそうと感じました。
また、自分で焼くという手間をかけたからこそ、そこから得られたものへの喜びは大きいです。
レストランで出てきた肉とはまた違う喜びがあります。
これ、なんなんでしょうね。
一種の自己効力感による幸福なのかもしれません。
自分は美味しいものをつくり、自分を満たすことが出来る、という。
単にレストランで高級な料理を食す、とはまた違う、より現実的な、実感を伴う満足感があるように思います。
わにわにこんなふうに、自分で肉を焼くからこそ得られる満足を教えてくれます。
おいしいものをお腹いっぱい食べられることの幸せ
絵本の最後のページでは、
「ああ、しあわせなわにわに」
という言葉とともに太陽の下でお腹を膨らせて寝っ転がるわにわにが描かれます。
美味しいものを食べて満足げに寝っ転がるわにわにを見ていると、幸せとはシンプルなものなんだなと分かります。
人はとかく人と比べたり、不足しているものに目を向けがちです。
しかしわにわにの姿を見ていると、美味しいものをお腹いっぱい食べられることが、すごく大きな幸せに見えてきます。
そこには他人との比較も、不足感ありません。
わにわにはそんな風に、シンプルな人生の幸せを教えてくれます。
まとめ
今回は『わにわにのごちそう』の感想を書いてみました。
わにわにシリーズは、日常のシンプルな一コマを取り上げて、幸せの形として提示してくれる作品が多い気がします。
個人的に結構好きです。
それでは、また次回。